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国際的な金融規制改革、次の課題は?(下)~シャドーバンキングなど

二毛 次郎

1.FSB レポートに基づくシャドーバンキング概観

 前回に続き、シャドーバンキングについて規模などの計数面と個別分野ごとの規制の動きを確認していこう。FSBの推計ではシャドーバンキングの規模は2002年で27兆ドル、2007年には60兆ドルに拡大し、2010年でもその規模を維持している(資金循環データを使いその他金融機関等から推計)。シャドーバンキングの活動規模は伝統的な銀行部門の半分近くに達しており、また、そのほぼ半分は米国で行われているものだ。部門毎の内訳では各種の投資ファンドが29%、MMFが約8%(4.8兆ドル)である。
 シャドーバンキングという用語法が金融危機以降に広く使われてきたのは、銀行システム外部の機関や活動による銀行類似機能を注視すべきだとの考えを反映したものだろう。シャドーバンキングは銀行システム同様に、単独かシステムの一部として満期や流動性変換、レバレッジ拡大といった"金融"機能を果たす。シャドーバンキング主体は、レポ取引やABCPなど短期市場への依存が高く、流動性逼迫でリスクが増幅されやすい。また、証券化やヘッジ取引などでの信用リスク移転が不完全だとリスクは残るが軽視されがちである。
 シャドーバンキングによる信用仲介活動は、銀行などと比べ規制が不十分なものが少なくない。監督当局は、その"悪"影響から潜在的なシステミックリスクが懸念される分野に焦点を合わせて監視する必要がある。主要な4つのリスク分野は(ⅰ)調達・運用の満期変換、(ⅱ)流動性変換、(ⅲ)不完全な信用リスク移転、そして(ⅳ)レバレッジである。これらへの監視は、金融システムのイノベーションと変容を捕捉するために柔軟で将来を見通し、規制の裁定が生じる懸念に対処する必要がある。また、システミックリスクを点検する際はシャドーバンキングと通常の銀行システムとの相互連関に注意すべきである。

2.シャドーバンキングに対する5分野での規制強化の動き

 FSB は、既存の規制を棚卸したうえで規制強化に向けて5つの分野での作業活動を、関係機関に勧告し進めている。この点では、バーゼル委員会もある種の下請け的な役回りだ。

 (ⅰ)銀行部門のシャドーバンキング主体との取引への規制(間接規制)。 バーゼル銀行監督委員会が、健全な監督のため連結対象拡充、リスク集中や大口(債権)規制見直し、シャドーバンキングのリスクウェイト、そして暗黙の支援を検討する。
 (ⅱ)MMFマネーマーケットファンド)の規制見直し。 証券監督者国際機構(IOSCO)が、MMFに関する規制について検討する。
 (ⅲ)その他のシャドーバンキング主体に対する規制 FSBの専門委員会に作業部会が作られMMF以外のシャドーバンキング主体について検討する。
 (ⅳ)証券化についての規制。 IOSCOが、バーゼル委員会と連携して証券化商品の一部保有要件や透明性について検討する。
 (ⅴ)証券貸借とレポ取引についての規制。 IOSCOの新設作業部会が証券貸借とレポ取引を検討、証拠金と証券担保掛け目を検討する。

 これら5つの作業部門はFSBへ2012年中に報告し、FSBは全作業の一貫性を担保する。

3.シャドーバンキング・システムへの規制対応にむけたFSBによる11の勧告

 FSBは以下の11の勧告をまとめており、上記の作業部会の取組みと合わせてシャドーバンキング全体として網をかけるとともに、特に注意が必要な分野や銀行との相互連関で発生するリスクについて注意喚起を行っている。

 ①規制上の連結対応で健全性規制の観点から、銀行がスポンサーのシャドーバンキング主体は連結バランスシートに含むべきで、規制は国際的に一貫して適応すべきである。
 ②銀行の対シャドーバンキングエクスポージャー規制は、規模・特質ともに強化すべき。
 ③銀行のリスクベースの対シャドーバンキング主体向けエクスポージャーの所要自己資本は再検討すべきである。下記の事項にとりわけ注意すべきである。
  ・投資ファンドの扱いでは基礎をなす資産とレバレッジを考慮し厳密なルック・スルー。
  ・短期信用供与取決めのうちバーゼルⅡ/Ⅲの証券化規制枠組みの範疇外にあるもの。
 ④暗黙の支援"への扱い厳格化を踏まえ銀行が非連結機関の後ろ盾となることを制限。
 ⑤MMFに対する規制はさらに強化すべきである。
 ⑥MMF以外のシャドーバンキング主体に対する規制は、健全性の観点(例えば、自己資本規制及び流動性規制)から評価し強化すべき。
 ⑦証券化のインセンティブ問題に適切に取組むべきである。特に下記の事項に注意すべき
  ・証券化の供給者(オリジネーター、スポンサー)への一部保有義務。   ・証券化商品の透明性向上と標準化。  ⑧担保付調達市場、特にレポ取引と証券貸借取引を注意深く評価し制度をより強化すべ。
 ⑨透明性と報告義務は適切に改善し続けるべきである。モニタリング枠組みの勧告に沿って、シャドーバンキング機関は必要な報告と開示を求めるべきである。
 ⑩金融機関の引受基準は厳格でなければならず、適宜、改善されていかねばならない。
 ⑪シャドーバンキング活動を支える格付け会社の役割は、適切に縮小すべきである。
 以上の11項目をみるとシャドーバンキングへの規制が、銀行への規制や市場のインフラ強化、証券化の規制強化、格付け会社への対応などの広範な規制分野に結びついていることがみてとれる。見えづらいシャドーに目を向けた動きが徐々に強められつつようだ。

 蛇足だが、ユーロ加盟国の救済のためECBによる周辺国債購入ではなく、EFSF(欧州金融安定ファシリティー)に保証機能とSIVへの投資資金拠出を担わせて拠出金にレバレッジをかけるといった議論は、FSBのレポートを踏まえると国際的かつ公的なシャドーバンク構築の取組みだったようにもみえてくる。金融システムの仕組みは複雑である。

(完)
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